じろうものがたり 02 だいにぶ
次郎物語 02 第二部

冒頭文

一 それから 母に死別してからの次郎の生活は、見ちがえるほどしっとりと落ちついていた。彼は、なるほど、はたから見ると淋しそうではあった。彼の眼の底に焼きつけられた母の顔が、何かにつけ、食卓や、壁や、黒板や、また時としては、空を飛ぶ雲のなかにさえあらわれて、ともすると、彼の気持を周囲の人たちから引きはなしがちだったのである。しかし、母が、臨終の数日まえに、 「あたしは、乳母やよりももっと

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 下村湖人全集 第一巻
  • 池田書店
  • 1965(昭和40)年7月10日