いちようじょしのたけくらべをよみて |
一葉女史の「たけくらべ」を読みて |
冒頭文
本郷臺を指(サス)ヶ谷(ヤ)かけて下りける時、丸山新町と云へるを通りたることありしが、一葉女史がかゝる町の中に住まむとは、告ぐる人三たりありて吾等辛(やうや)く首肯(うなづ)きぬ。やがて「濁り江」を讀み、「十三夜」を讀み、「わかれみち」を讀みもてゆく中に、先の「丸山新町」を思ひ出して、一葉女史をたゞ人ならず驚きぬ。是の時「めざまし草」の鴎外と、なにがし等との間に、詩人と閲歴の爭ありしが、吾等は耳を
文字遣い
旧字旧仮名
初出
底本
- 日本現代文學全集8
- 講談社
- 1967(昭和42)年11月19日