ほくろうらいあん |
北朗来庵 |
冒頭文
その昔し、豊臣家が亡びかけてからの事、和寇と云ふものがあつて支那の東南の海岸を荒す、其の勢すさまじく、支那人大に恐れをなして、南清のある孤島に高い〳〵見張所をこしらへて、いつもその見張所の上に番人が居て、和奴来るや否やと眼を皿大にして見て居る。若しそれ、日の丸だとか、丸に二ツ引きだとか、丸に十の字だとか、さう云ふ旗じるしを差上げた船が見えようものなら、和寇来る、と八方に打電(でもあるまいが)したも
文字遣い
新字旧仮名
初出
底本
- 尾崎放哉全集 増補改訂版
- 彌生書房
- 1972(昭和47)年6月10日、1980(昭和55)年6月10日増補改訂版