おれのき
俺の記

冒頭文

俺には名前がない、但し人間が付けてくれたのは有るが、其れを云ふのは暫く差控へて置かう。 だが、何も恥かしいので云はぬと云ふわけでは毛頭ない。云ひにくいから云はないのだ。外になんにも理窟はない、冬になれば雪が降る、夜になれば暗くなる、腹が減つたら食ふのだ、一体、理窟と云ふ物も、あとから無理に拵へてクツ付けるので、なす事、する事、始めから一一理窟で割り出して来る物ではない。 余計な

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 尾崎放哉全集 増補改訂版
  • 彌生書房
  • 1972(昭和47)年6月10日、1980(昭和55)年6月10日増補改訂版