荒磯の春というものは、地上がまだ荒涼としている冬の内に、もうそろそろやって来ているのである。海草の芽は冬の内に生える。そしていよいよ陸上の春が来て、人間が春の磯遊びにゆく頃には海草もかなりのびて、新芽を喰いに来た魚族は更に深みへ移り、温い潮につれていろいろに移動する。 その結果、この頃での磯釣は冬の内に初まる。十二月から翌年の二月へかけて、伊豆方面のブリ、ブダイ、イズスミ、クシロなぞの竿