おどるちへいせん 09 ミセス セブン アンド ミスター トゥウェンティスリー |
踊る地平線 09 Mrs.7 and Mr.23 |
冒頭文
1 蜜蜂の群の精励を思わせる教養ある低い雑音の底に、白い運命の玉がシンプロン峠の小川のような清列なひびきを立てて流れていた。 シャンベルタンの谷の冬の葡萄畑をロウザンヌ発大特急(グラン・ラピイド)の食堂車の窓から酔った眼が見るような一面に暖かい枯草色のテュニス絨毯なのである。それを踏んで、あたしいま香料浴を済ましてきたところなの、と彼女の全身の雰囲気が大声に公表している、中年近い女
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 踊る地平線(下)
- 岩波文庫、岩波書店
- 1999(平成11)年11月16日