かんじんしわ
閑人詩話

冒頭文

佐藤春夫の車塵集を見ると、「杏花一孤村、流水数間屋、夕陽不見人、牯牛麦中宿」といふ五絶を、 杏(あんず)咲くさびしき田舎 川添ひや家をちこち 入日さし人げもなくて 麦畑にねむる牛あり と訳してあるが、「家をちこち」はどうかと思ふ。原詩にいふ数間の屋は、三間か四間かの小さな一軒の家を指したものに相違なからう。古くは陶淵明の「園田の居に帰る」と題する詩に、「拙を守つて園田に帰

文字遣い

新字旧仮名

初出

「河上肇著作集第9巻」筑摩書房、1964(昭和39)年12月15日

底本

  • 河上肇全集 21
  • 岩波書店
  • 1984(昭和59)年2月24日