にんぎょのなぞおいわごろし
人魚謎お岩殺し

冒頭文

序 消え失せた人魚 今こそ、二三流の劇場を歩いているとはいえ、その昔、浅尾里虹(あさおりこう)の一座には、やはり小屋掛けの野天芝居時代があった。 それでこそ、その名は私たちの耳に、なかなか親しみ深く(ファミリアー)でもあり、よしんばあの惨劇が起らなかったにしろ、どうしてどうして忘れ去れるものではなかった。 と云うのは、その一座には、日本で一ヶ所と云ってもよい特殊な上演

文字遣い

新字新仮名

初出

「中央公論」1935(昭和10)年8月

底本

  • 潜航艇「鷹の城」
  • 現代教養文庫、社会思想社
  • 1977(昭和52)年12月15日