いっしゅういちやものがたり
一週一夜物語

冒頭文

一、大人 O'Grie(サヒーブ・オーグリー) 僕は、「実話」というのが大の嫌いだから、ここには本当のことを書く。 というものの、どうもこれが難題なので、弱る。作らず、嘘でなく、じっさい僕が聴いた他人の告白なんて——よくよく天邪鬼(あまのじゃく)でないかぎり、いえた芸ではないと思う。 とにかく、これはいわゆる実話ではない。あくまで、僕が経験し、じっさいに聴いた話である。

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1938(昭和13)年8月

底本

  • 潜航艇「鷹の城」
  • 現代教養文庫、社会思想社
  • 1977(昭和52)年12月15日