おどるちへいせん 02 テムズにきく
踊る地平線 02 テムズに聴く

冒頭文

窓 私たちの部屋には、四角な枠に仕切られた二枚の淡色街上風景が、まるで美術館の絵のようにならんで壁にひらいている。くる日も来る日も鉛いろの雨に降りこめられている私達に、かろうじて外部の世界との交渉が許されるのは、いま言ったふたつの窓硝子(ガラス)をとおして町に移る陰影のうごきを眺める場合だけだ。窓は家の眼だという。が、この窓はただちに私たちの眼でもあった。私と彼女は、ひとりずつその穴ぐらみた

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 踊る地平線(上)
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1999(平成11)年10月15日