せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」

冒頭文

第一編 海底の惨劇      一、海—武人の墓 それは、夜暁(よあけ)までに幾ばくもない頃であった。 すでに雨は止み、波頭も低まって、その轟きがいくぶん衰(おとろ)えたように思われたが、闇はその頃になるとひとしおの濃さを加えた。 その深さは、ものの形体(かたち)運動(うごき)のいっさいを呑(の)み尽してしまって、その頃には、海から押し上がってくる、平原のような霧があるの

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」博文館、1935(昭和10)年4~5月号

底本

  • 潜航艇「鷹の城」
  • 現代教養文庫、社会思想社
  • 1977(昭和52)年12月15日