アブセンス・オブ・マインド
アブセンス・オブ・マインド

冒頭文

多少のアブセンス・オブ・マインドというのは、誰にもあることである。あるのが普通といってよかろう。しかし私は可なり念入のアブセンス・オブ・マインドをやったことがある。今に思出しても、自分で可笑(おか)しくなるのである。 それは私がまだ金沢の四高に教師をしていた頃のことである。或日同僚のドイツ人ユンケル氏から晩餐に招かれた。金沢では外国人は多く公園から小立野(こだつの)へ入る入口の処に住んで

文字遣い

新字新仮名

初出

「新風土」1939(昭和14)年1月

底本

  • 続思索と体験『続思索と体験』以後
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1980(昭和55)年10月16日