一八八三年七月十七日、草木もねむる真夜なかの二時半のことである。ベジエ墓地のはずれに建っている小さなほったて小屋に寐起(ねお)きをしている墓番は、台所のなかへ入れておいた飼犬がけたたましく吠えだしたので、その声に夢を破られた。 すぐに寐床(ねどこ)を降りていってみると、どうやら小屋のまわりをルンペンか何かが徘徊してでもいるらしく、犬は、夢中になって吠えながら、頻りに戸の下のところを嗅いで