イオーヌィチ
イオーヌィチ

冒頭文

一 県庁のあるS市へやって来た人が、どうも退屈だとか単調だとかいってこぼすと、土地の人たちはまるで言いわけでもするような調子で、いやいやSはとてもいいところだ、Sには図書館から劇場、それからクラブまで一通りそろっているし、舞踏会もちょいちょいあるし、おまけに頭の進んだ、面白くって感じのいい家庭が幾軒もあって、それとも交際ができるというのが常だった。そしてトゥールキンの一家を、最も教養あり才能ある家

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 可愛い女・犬を連れた奥さん
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1940(昭和15)年10月11日