かわいいひと
可愛い女

冒頭文

オーレンカという、退職八等官プレミャンニコフの娘が、わが家の中庭へ下りる小さな段々に腰かけて、何やら考え込んでいた。暑い日で、うるさく蠅(はえ)がまつわりついて来るので、でももうじき夕方だと思うといかにもうれしかった。東の方からは黒い雨雲がひろがって来て、時おりその方角から湿っぽい風が吹いていた。 中庭のまんなかにはクーキンという、遊園『*ティヴォリ』の経営主と持主とを一身に兼ねて、やは

文字遣い

新字新仮名

初出

DUSHECHKA

底本

  • 可愛い女・犬を連れた奥さん
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1940(昭和15)年10月11日