ひとばしらのはなし
人柱の話

冒頭文

(南方閑話にも收めたれど、一層増補したる者を爰に入る) 建築土工等を固めるため人柱を立てる事は今も或る蕃族に行なはれ其傳説や古蹟は文明諸國に少なからぬ。例せば印度の土蕃が現時も之を行なふ由時々新聞にみえ、ボムパスのサンタルパーガナス口碑集に王が婿の強きを忌んで、畜類を供えても水が湧かぬ涸池の中に乘馬のまゝ婿を立せると流石は勇士で、水が湧いても退かず、馬の膝迄きた、吾が膝まできた、脊迄きた

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「變態心理 第十六卷第三號」1925(大正14)年9月

底本

  • 續南方隨筆 覆刻
  • 沖積舎
  • 1992(平成4)年7月20日