まさことまき
方子と末起

冒頭文

一、髪を切られる少女 (方子(まさこ)からの手紙) 末起ちゃん、お手紙有難う。 ほんとうにお姉さまは、末起ちゃんのために二年越しの敷布(シーツ)のうえがすこしも淋しくはありません。 行くんですってね……? まい日末起ちゃんは学校の裏庭へ行って、やまももの洞に彫ったあれを見ているそうね。 あたくしも、あなたと散歩した療養所裏の林の、白樺の幹を欠かさず見ています。

文字遣い

新字新仮名

初出

「週刊朝日読物号」朝日新聞社、1938(昭和13)年5月

底本

  • 航続海底二万哩
  • 桃源社
  • 1975(昭和50)年12月5日