あたまとあし
頭と足

冒頭文

一 船が港へ近づくにつれて、船の中で起った先刻の悲劇よりも何よりも、新聞記者である里村(さとむら)の心を支配したのは、如何にしてこの事件をいち早く本社に報道するかという職業意識であった。 彼は、社へ発送すべき電文の原稿はもうしたためている。しかし、同じ船の中に、自分の社とふだんから競争の地位にたっているA新聞の記者田中(たなか)がちゃんと乗りあわせて、矢張り電文の原稿は書いてしまっ

文字遣い

新字新仮名

初出

「探偵趣味」1926(大正15)年2月号

底本

  • 「探偵趣味」傑作選 幻の探偵雑誌2
  • 光文社文庫、光文社
  • 2000(平成12)年4月20日