びだんふきん |
| 美談附近 |
冒頭文
両袖献納 一 川村節子さんは、未だ嘗て、人のせぬことをしたことはなかつた。それほど、目立つことが嫌ひであり、異を樹てるといふことに趣味はなかつた。 ところが、たつた一つ、今度といふ今度は、人のせぬことを、ついしてしまつた。夫の周作が不機嫌な顔をするのも無理はない。 それは、新聞に、婦人の標準服といふものが図解入りで発表された、その日、川村節子さんは、式服を除いて、持つてゐる着物全部の両
文字遣い
新字旧仮名
初出
「毎日新聞」1943(昭和18)年3月20日~30日
底本
- 岸田國士全集26
- 岩波書店
- 1991(平成3)年10月8日