ひこさんにのぼる
英彦山に登る

冒頭文

私は今年英彦山に五六度登った。 或人々は彦山はつまらぬ山だという。 成程銅の大鳥居から四十二丁の上宮(しょうぐう)迄は樹海の中を登りつめるので、見はらしはなし、谿流は添わず、大英彦全体を眺める事の出来ない凹凸の多い山なので、ひととおりの登山丈では、一向変化のないつまらぬ山と思えるのもむりはない。 だが、彦山に一夏を過して、古老から彦山伝説のかずかずをきかせられ、或は絶

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 杉田久女随筆集
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 2003(平成15)年6月10日