はなしのたね
話の種

冒頭文

一      給仕人は電気 今春米国モンタナの工科大学で卒業生のために祝宴を開いた時、ボーイの代りに電気を使って御馳走した。一列に並べた食卓の真中に二条のレールを据え付け、この上を御馳走を満載した可愛らしい電車が徐々(そろそろ)と進行する。卓の両側に陣取った御客様の前に来るごとに、宜しく召上がれと停車する。この給仕車の進退を食卓の片隅でやっていた主人役は、その学校の教授某先生であったという

文字遣い

新字新仮名

初出

「東京朝日新聞」1907(明治40)年9月~1908(明治41)年10月(不定期88回連載)

底本

  • 寺田寅彦全集 第十二巻
  • 岩波書店
  • 1997(平成9)年11月21日