おしどりかがみ
鴛鴦鏡

冒頭文

一 Y君は語る。 これは明治の末年、わたしが東北のある小さい町の警察署に勤めていた時の出来事と御承知ください。一体それは探偵談というべきものか、怪談というべきものか、自分にもよく判らない。こんにちの流行詞(はやりことば)でいえば、あるいは怪奇探偵談とでもいうべき部類のものであるかも知れない。 地方には今も往々見ることであるが、ここらも暦が新旧ともに行なわれていて、盆や正月

文字遣い

新字新仮名

初出

「新青年」1928(昭和3)年10月

底本

  • 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
  • 原書房
  • 1999(平成11)年7月2日