こつぼがり
小壺狩

冒頭文

一 彦山村から槻(つき)の木(き)へ抜ける薬師峠の山路に沿うて、古ぼけた一軒茶屋が立つてゐます。その店さきに腰を下ろして休んでゐるのは、松井佐渡守の仲間(ちゆうげん)喜平でした。松井佐渡守といふのは、当国小倉の城主細川忠興(ただおき)の老臣として聞えた人でした。 晴れた初夏の昼過ぎて、新鮮な若葉の山は、明るい日光をうけて陽気に笑つてゐました。先刻から軒さきに突つ立つた高い木の枝にと

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 泣菫随筆
  • 冨山房百科文庫43、冨山房
  • 1993(平成5)年4月24日