こわれゆびわ
こわれ指環

冒頭文

あなたは私のこの指環の玉が抜けておりますのがお気にかかるの、そりやアあなたのおつしやる通り、こんなにこわれたまんまではめておりますのは、あんまり見つともよくありませんから、何なりともはめかへれば、宜しいので……ですが私の為にはこの指環のこわれたのが記念でありますから、どうしてもこれをはめかへる事が出来ないのです。ああ月日の経つは誠に早いものでこの指環をこわしてから、もはや二年越になります。そのうち

文字遣い

新字旧仮名

初出

「女学雑誌」1891(明治24)年1月1日

底本

  • 紫琴全集 全一巻
  • 草土文化
  • 1983(昭和58)年5月10日