いみんがくえん
移民学園

冒頭文

上 身は錦繍に包まれて、玉殿の奥深くといふ際にこそあらね。名宣らばさてはと、おほかたの人もうなづく、良人に侍り。朝夕爨(さん)が炊(かし)ぐ米、よしや一年を流し元に捨てたればとて、それ眼立つべき内証にもあらず。人は呼ばぬに来りて諂(へつ)らひ、我は好まぬ夫人交際(おくさまつきあい)、それにも上坐を譲られて、今尾の奥様とぞ、囃し立てらるる。これがそも人生の不幸かや。 春の花にも、秋の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文芸倶楽部」1899(明治32)年8月

底本

  • 紫琴全集 全一巻
  • 草土文化
  • 1983(昭和58)年5月10日