わがろうごく
我牢獄

冒頭文

もし我にいかなる罪あるかを問はゞ、我は答ふる事を得ざるなり、然(しか)れども我は牢獄の中(うち)にあり。もし我を拘縛(こうばく)する者の誰なるを問はゞ、我は是を知らずと答ふるの外なかるべし。我は天性怯懦(けふだ)にして、強盗殺人の罪を犯すべき猛勇なし、豆大の昆虫を害(そこな)ふても我心には重き傷痍(しやうい)を受けたらんと思ふなるに、法律の手をして我を縛せしむる如きは、いかでか我が為(な)し得ると

文字遣い

新字旧仮名

初出

「女學雜誌 三二〇號」女學雜誌社、1892(明治25)年6月4日

底本

  • 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年6月5日