あいしじょ
哀詞序

冒頭文

歓楽は長く留り難く、悲音は尽くる時を知らず。よろこびは春の華の如く時に順(したが)つて散れども、かなしみは永久の皷吹をなして人の胸をとゞろかす、会ふ時のよろこびは別るゝ時のかなしみを償ふべからず。はたまた会ふ時の心は別るゝ時の心の万分の一にだも長からず。生を享(う)け、人間(じんかん)に出でゝ、心を労して荊棘(けいきよく)を過(すぐ)る、或は故なきに敵となり、或は故なきに味方となり、恩怨両(ふた)

文字遣い

新字旧仮名

初出

「評論 十二號」女学雜誌社、1893(明治26)年9月9日

底本

  • 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年6月5日