へんろ
遍路

冒頭文

那智(なち)には勝浦(かつうら)から馬車に乗つて行つた。昇り口のところに著いたときに豪雨が降つて来たので、そこでしばらく休み、すつかり雨装束(あましやうぞく)に準備して滝の方へ上つて行つた。滝は華厳(けごん)よりも規模は小さいが、思つたよりも好かつた。石畳(いしだたみ)の道をのぼつて行くと僕は息切れがした。 さてこれから船見(ふなみ)峠、大雲取(おほくもとり)を越えて小口(こぐち)の宿(

文字遣い

新字旧仮名

初出

「時事新報」1928(昭和3)年1月15日~17日

底本

  • 斎藤茂吉選集 第八巻
  • 岩波書店
  • 1981(昭和56)年5月27日