ぶっぽうそう
仏法僧鳥

冒頭文

大正十四年八月四日の朝奈良の宿を立つて紀伊の国高野山(かうやさん)に向つた。吉野(よしの)川を渡り、それから乗合自動車に乗つたころは、これまでの疲れが幾らか休まるやうな気持でもあつた。これまでの疲れといふのは、比叡山上(ひえいさんじやう)で連日『歌(うた)』の修行をし、心身へとへとになつたのをいふのである。 乗合自動車を乗り棄(す)てると、O先生と私とは駕籠(かご)に乗り、T君とM君とは

文字遣い

新字旧仮名

初出

「時事新報」1928(昭和3)年1月4日、5日

底本

  • 斎藤茂吉選集 第八巻
  • 岩波書店
  • 1981(昭和56)年5月27日