うたよみにあたうるしょ
歌よみに与ふる書

冒頭文

歌よみに與ふる書 仰(おほせ)の如く近來和歌は一向に振ひ不申(まをさず)候。正直に申し候へば萬葉以來實朝以來一向に振ひ不申候。實朝といふ人は三十にも足らでいざ是からといふ處にてあへなき最期を遂げられ誠に殘念致し候。あの人をして今十年も活かして置いたならどんなに名歌を澤山殘したかも知れ不申候。兎に角に第一流の歌人と存候。強(あなが)ち人丸赤人の餘唾(よだ)を舐(ねぶ)るでも無く固(もと)よ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「日本」1898(明治31)年2月12日~3月4日

底本

  • 子規全集 第七卷 歌論 選歌
  • 講談社
  • 1975(昭和50)年7月18日