やまがら
山雀

冒頭文

一 私の近くにアメリカ帰りの老紳士が住んでをります。その人が今年の春六甲山へ登つて、その帰りにあたりの松林で小鳥の巣を見つけました。巣にはやつと羽が生えかけたばかしの雛(ひな)が四羽をりました。雛は老紳士を見ると、口を一ぱいに開けて、ちいちいと鳴きました。 「可愛い奴だな。俺の顔を見ると、あんなにものを欲しがつてゐるよ」 老紳士は何か持ち合せはないかしらと袂をさぐつてみましたが、

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 泣菫随筆
  • 冨山房百科文庫43、冨山房
  • 1993(平成5)年4月24日