ふがくのししんをおもう
富嶽の詩神を思ふ

冒頭文

空(くう)を望んで駿駆する日陽、虚に循(したが)つて警立する候節、天地の運流、いつを以て極みとはするならん。 朝(あした)に平氏あり、夕(ゆふべ)に源氏あり、飄忽(へうこつ)として去り、飄忽として来(きた)る、一潮(いつてう)山を噬(か)んで一世紀没し、一潮退き尽きて他世紀来る、歴史の載するところ一潮毎に葉数を減じ、古苔(こたい)蒸し尽して英雄の遺魂日に月に寒し。 嗟吁(あゝ)

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文學界 一號」女學雜誌社、1893(明治26)年1月31日

底本

  • 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1969(昭和44)年6月5日