せかいかいだんめいさくしゅう 17 ゆうれいのいてん
世界怪談名作集 17 幽霊の移転

冒頭文

ジョン・ヒンクマン氏の田園住宅は、いろいろの理由から僕にとっては甚(はなは)だ愉快な場所で、やや無遠慮ではあるが、まことに居心地(いごこち)のよい接待ぶりの寓居(ぐうきょ)であった。庭には綺麗に刈り込んだ芝原と、塔のように突っ立った槲(かしわ)や楡(にれ)の木があって、ほかにも所どころに木立ちが茂っていた。家から遠くないところに小さい流れがあって、そこには皮付きの粗末な橋が架けてあった。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 世界怪談名作集 下
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1987(昭和62)年9月4日