だいぼさつとうげ 40 やましなのまき |
大菩薩峠 40 山科の巻 |
冒頭文
一 過ぐる夜のこと、机竜之助が、透き通るような姿をして現われて来た逢坂の関の清水の蝉丸神社(せみまるじんじゃ)の鳥居から、今晩、またしても夢のように現われて来た物影があります。先晩は一人でしたが、今夜は、どうやら二人らしい。 その二人、どちらも小粒の姿で、ことによると子供かも知れない。石の階段をしとしとと下りて、鳥居のわきから、からまるようにして海道筋へ姿を見せた二人は、案の如く子
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 大菩薩峠19
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1996(平成8)年9月24日