だいぼさつとうげ 39 きょうのゆめおうさかのゆめのまき |
大菩薩峠 39 京の夢おう坂の夢の巻 |
冒頭文
一 同じその宵(よい)のこと、大津の浜から八十石の丸船をよそおいして、こっそりと湖中へ向って船出をした甲板の上に、毛氈(もうせん)を敷いて酒肴を置き、上座に構えているその人は、有野村の藤原の伊太夫で、その傍に寄り添うようにして、 「御前様(ごぜんさま)、光悦屋敷とやらのことは、もう一ぺんよくお考えあそばしませ、大谷風呂の方は、どちらへ転びましても結構でございますがねえ」 それは女
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 大菩薩峠19
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1996(平成8)年9月24日