のうはそうじゅうし
脳波操縦士

冒頭文

森源の温室 奥伊豆——と呼ばれているこのあたりは、東京からいって、地理的にはほんの僅かな距離にあるのに、まるで別天地といってもよいほど、南国のような、澄み切った紺碧の空と、そして暖かい光線に充ち満ちていた。 こんもりと円やかに波うっている豊かな土地は、何かしらこの私にさえ希望を持たせてくれるような気がしてならない。 私は眼を上げて、生々しい空気を吸いこんだ。この、塵一つ浮

文字遣い

新字新仮名

初出

「科学ペン」1938(昭和13)年9月号

底本

  • 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2003(平成15)年6月10日