こどく
孤独

冒頭文

洋次郎は、銀座の裏通りにある“ツリカゴ”という、小さい喫茶店が気に入って、何時(いつ)からとはなく、そこの常連みたいになっていた。と、いってもわざわざ行く程でもないが出歩くのが好きな洋次郎は、ツイ便利な銀座へ毎日のように行き、行けば必ず“ツリカゴ”に寄るといった風であった。 “ツリカゴ”は小さい家だったけれど、中は皆ボックスばかりで、どのテーブルも真黒などっしりしたものであり、又客の尠い為で

文字遣い

新字新仮名

初出

「自由律」1932(昭和7)年12月号

底本

  • 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2003(平成15)年6月10日