げんちょう
幻聴

冒頭文

ああ皆様、なんという私は、この呪われた運命(ほし)の下に生れなければならなかったのでございましょう。——思っても嫌な嫌な、バタバタと足をふみならし、歯ぎしりをしてのたうちたいような、居ても立ってもいられない、焦燥の真ッただなかにほーりこまれてしまったのでございます。 ——こんな愚痴を申し上げてよいものか?……さァ、一寸、ためらうのでございますけれども……。 皆様、「千里眼」とい

文字遣い

新字新仮名

初出

「ぷろふいる」ぷろふいる社、1934(昭和9)年12月号

底本

  • 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 2003(平成15)年6月10日