いきをとめるおとこ |
息を止める男 |
冒頭文
無くて七癖というように誰れでも癖は持っているものだが、水島の癖は又一風変っていた。それは貴方にお話してもおそらくは信じてくれないだろうと思うがその癖は『息を止める』ということなのである。 私も始め友人から聞いた時は冗談かと信じなかったが、一日彼の家に遊びに行った時に笑い乍(なが)ら訊いてみると、彼は頗(すこぶ)る真面目でそれを肯定するのである。私も不思議に思ってどうしてそんなことをするの
文字遣い
新字新仮名
初出
「探偵趣味」1931(昭和6)年7月号
底本
- 怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像
- ちくま文庫、筑摩書房
- 2003(平成15)年6月10日