けつえきがたさつじんじけん
血液型殺人事件

冒頭文

忍苦一年 毛沼(けぬま)博士の変死事件は、今でも時々夢に見て、魘(うな)されるほど薄気味の悪い出来事だった。それから僅(わずか)に一月経(た)たないうちに、父とも仰(あお)ぐ恩師笠神(かさがみ)博士夫妻が、思いがけない自殺を遂(と)げられた時には、私は驚きを通り越して、魂が抜けたようになって終(しま)い、涙も出ないのだった。漸(ようや)くに気を取直して、博士が私に宛てられた唯一の遺書を読むと

文字遣い

新字新仮名

初出

「ぷろふいる」1934(昭和9)年6、7月号

底本

  • 「ぷろふいる」傑作選
  • 光文社文庫、光文社
  • 2000(平成12)年3月20日