はなたばのむし
花束の虫

冒頭文

一 岸田直介(きしだなおすけ)が奇怪な死を遂げたとの急報に接した弁護士の大月対次(おおつきたいじ)は、恰度(ちょうど)忙しい事務もひと息ついた形だったので、歳若いながらも仕事に掛けては実直な秘書の秋田(あきた)を同伴して、取るものも不取敢(とりあえず)大急ぎで両国(りょうごく)駅から銚子(ちょうし)行の列車に乗り込んだ。 岸田直介——と言うのは、最近東京に於て結成された瑪瑙座(めの

文字遣い

新字新仮名

初出

「ぷろふいる」1934(昭和9)年4月号

底本

  • 「ぷろふいる」傑作選 幻の探偵雑誌1
  • 光文社文庫、光文社
  • 2000(平成12)年3月20日