ぜっけいばんこくはくらんかい
絶景万国博覧会

冒頭文

一、尾彦楼(おひころう)の寮に住む三人のこと        並(なら)びに老遊女二つの雛段を飾ること なんにしろ明治四十一年の事とて、その頃は、当今の接庇雑踏(せっぴざっとう)とは異なり、入谷田圃(いりやたんぼ)にも、何処かもの鄙(ひな)びた土堤の悌(おもかげ)が残っていた。遠見の北廓を書割にして、茅葺屋根(かやぶきやね)の農家がまだ四五軒も残っていて、いずれも同じ枯竹垣を結び繞(めぐ)ら

文字遣い

新字新仮名

初出

「ぷろふいる」1935(昭和10)年1月号

底本

  • 「ぷろふいる」傑作選
  • 光文社文庫、光文社
  • 2000(平成12)年3月20日