わたしのりゅうのすけかん ――ぶたいじょうのあいじん――
私の竜之助感 ――舞台上の愛人――

冒頭文

戀は盲目だとか、昔からの諺である。相手が惚れた男なら、あばたもえくぼに見えるように、所詮、戀人は批評の外の存在である。私の「大菩薩峠」に對する氣持も、正直に言えばその通りで、全く批評を超えたものである。 がしかし、私がかほど戀する「机龍之助」とは、原作者がいうところの机龍之助とは違うかも知れない。 或は小説が「大菩薩峠」の作者には思いも及ばない龍之助であるかも知れない。何となれ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 文藝 臨時増刊 中里介山大菩薩峠読本
  • 河出書房
  • 1956(昭和31)年4月6日