だいぼさつとうげ 36 しんげつのまき
大菩薩峠 36 新月の巻

冒頭文

一 とめどもなく走る馬のあとを追うて、宇治山田の米友は、野と、山と、村と、森と、田の中を、かなり向う見ずに走りました。 しかし、相手は何をいうにも馬のことです。さしもの米友も、追いあぐねるのが当然でしたが、そうかといって、そのまま引返す米友ではありません。ことに右の放たれたる馬には、長浜で買入れた家財雑具はいうに足らないとしても、たったいま両替したばっかりの何千というお金が、確実に

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 大菩薩峠16
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年7月24日