だいぼさつとうげ 24 るてんのまき |
| 大菩薩峠 24 流転の巻 |
冒頭文
一 宇治山田の米友は、碓氷峠(うすいとうげ)の頂(いただき)、熊野権現の御前(みまえ)の風車に凭(もた)れて、遥かに東国の方を眺めている。 今、米友が凭れている風車、それを米友は風車とは気がつかないで、単に凭れ頃な石塔のたぐいだと心得ている。米友でなくても、誰もこの平たい石の塔に似たものが、風車だと気のつくものはあるまい。子供たちは、紙と豆とでこしらえた風車を喜ぶ。ネザランドの農家
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 大菩薩峠9
- ちくま文庫、筑摩書房
- 1996(平成8)年4月24日