たきたてつたろうし
滝田哲太郎氏

冒頭文

滝田君はいつも肥っていた。のみならずいつも赤い顔をしていた。夏目先生の滝田君を金太郎と呼ばれたのも当らぬことはない。しかしあの目の細い所などは寧ろ菊慈童にそっくりだった。 僕は大学に在学中、滝田君に初対面の挨拶をしてから、ざっと十年ばかりの間可也親密につき合っていた。滝田君に鮭鮓(さけずし)の御馳走になり、烈しい胃痙攣(いけいれん)を起したこともある。又雲坪を論じ合った後、蘭竹を一幅貰っ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 大川の水・追憶・本所両国 現代日本のエッセイ
  • 講談社文芸文庫、講談社
  • 1995(平成7)年1月10日