うみからかえるひ
海から帰る日

冒頭文

1 五年間に通過して來た道、それは今考へたつてわからない。たゞわかるものは今の心だ。五年の最後に到達した心だ。人の心ではない。自分の心だ。             2 雲はビルデイングになつてくれない。風鈴草はいくら振つても鳴つてくれない。木馬は乘つたつて走らない。             3 私の生活は私の生活。私の心は私の心。あなたの生活もあなたの心もあなたののだ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「柊陵 第一二号」1931(昭和6)年3月

底本

  • 校定 新美南吉全集第二巻
  • 大日本図書
  • 1980(昭和55)年6月30日