みさを
節操

冒頭文

『房(ふさ)、奥様(おくさん)の出る時何とか言つたかい。』と佐山銀之助(さやまぎんのすけ)は茶の間に入(はひ)ると直(す)ぐ訊(きい)た。 『今日(けふ)は講習会から後藤様(ごとうさん)へ一寸(ちよつと)廻(まは)るから少(すこ)し遅くなると被仰(おつしや)いました。』 『飯(めし)を食(くは)せろ!』と銀之助は忌々(いま〳〵)しさうに言つて、白布(はくふ)の覆(か)けてある長方形の食卓の前に

文字遣い

新字旧仮名

初出

「太陽」1907(明治40)年9月

底本

  • 明治の文学 第22巻 国木田独歩
  • 筑摩書房
  • 2001(平成13)年1月15日