だいやじん
大野人

冒頭文

昨年の秋『日蓮論』の附録にする積りで書きながら、遂に載せずに今日に及べるもの       一 日蓮を書いて居ると、長髪白髯の田中正造翁が何処からともなく目の前に現はれる。予は折々、日蓮を書いて居るのか、翁を書いて居るのかを忘れて仕舞つた。予が始めて翁を知つたのは最早(もう)十年以前。其時は丁度六十であつた。田中正造と云へば足尾鉱毒問題の絶叫者として、議会の名物男と歌はれて居た。予は其の

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 近代日本思想大系10 木下尚江集
  • 筑摩書房
  • 1975(昭和50)年7月20日