じゆうのしと・しまださぶろう
自由の使徒・島田三郎

冒頭文

幸福なる思ひ出 若き友よ。 僕が島田三郎先生を語るとなれば、直ぐに一つの場面が目に浮ぶ。 大正十二年、この年は正月早々から先生は身心の疲労で、議会へも出なされず一切来客を謝絶して、番町の自邸で静養して居られた。かゝる時、僕のやうな世務に全く無交渉の者は幸福で、時々お邪魔して、自由にお話することが出来た。 或日、先生は、この社会多事の時に、病体で引き籠つて居るのが

文字遣い

新字旧仮名

初出

「中央公論」1933(昭和8)年9月号

底本

  • 近代日本思想大系10 木下尚江集
  • 筑摩書房
  • 1975(昭和50)年7月20日